かこのうた
予告

「何してんのさ」
背後で声がした。
少年はあまりの不意打ちに肩を強張らせる。
氷のようなさめざめとした声。
今後ろには一体どんなものが立っているのだろう。
もしかしたらこの闇に召喚された恐ろしいものかもしれない。





窓辺に座った彼は月の光を背に受けてまるで綺麗な人形の様だった。
軽い髪がサラサラと音を立てては流れる。
もし天使が人形を作って息を吹き込んだらこんなものが出来るんじゃないだろうか。
マユキはその綺麗な貌に暫し見とれた。
「何?」
気付かれたのが気恥ずかしくてマユキは目を逸らす。
その様子にルックは悪戯っぽく笑った。





「暫く外出は禁止ですよ」
レックナートの言葉に舌打ちして、ルックはベッドの中。
彼のことを思い描いた。
彼はどうしているだろう。
このままだと暫くは会えそうにない。
まったく何てバカなことをしたのだろう。





君は僕を憶えている?
遠い昔に会った僕の事を。



きっと忘れているね。
あんなに遠い昔のことだもの。



でもそれでもいいんだ。



もう一度刻んであげるから。



僕を忘れてしまわないように



遠い昔に唄った詩を。
もう一度君と唄おう。
花は咲き乱れて。
鳥も一緒に唄う。
過去は過去でしかないけれど。
今はまた君と一緒にいれるから。
今度は消えてしまわないように。
詩を唄う。



詩を・・・・・・。

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